リードエンジニアブログ 『PIM選定編』
第1話 PIM(商品情報管理)とは?
PIMとは? ~ B2Bビジネスの新常識【PIM徹底解説】では弊社営業マンの視点からPIMとは?についてご紹介しました。今回は、改めて「PIMとは何か?」を、エンジニア視点でご紹介したいと思います。
PIMの意味
PIM(Product Information Management=商品情報管理)は、マーケティングや営業活動に必要な商品情報を一元管理する仕組みを指します。具体的には、商品スペックや定価といったマスタ情報や、Webサイトやパンフレットに掲載するプロモーション情報をまとめて管理する手法です。従来、企業は商品を製造・流通させるために商品情報の管理に力を入れていましたが、PIMは商品の魅力をより広く訴求し、売上を伸ばすために重要な情報管理の仕組みです。管理される商品情報には、以下の項目が含まれます。
- 商品説明
- キャッチコピー
- 取扱説明書
- イメージ画像
- ブランドロゴ
- ピクトグラム
商品情報の更新には、社内のデータベースやパンフレット、カタログの改訂が必要ですが、手作業で行うのは効率が悪く、人的ミスのリスクもあります。さらに、デジタルシフトが加速する中、定期的な情報更新が行われないと、顧客に最新情報を届けられないリスクが高まります。
PIMを導入することで、常に最新の商品情報を管理でき、このような問題を解決できます。PIMには、連携する商品コンテンツの情報を迅速に修正できる、必要な情報をすぐに検索できる、社内プロセスを最適化できるといったメリットがあります。
PIMが生まれた背景
PIMが必要とされるようになったのは、商品情報の一貫性を保ち、顧客に正確かつタイムリーに情報を提供するニーズが高まったためです。PIMがソリューションとして登場した当初は、紙のカタログとWebサイトに掲載する商品情報を一元管理するために利用されることが多くありました。それ以前は、紙カタログの情報をWebに転記する方法が一般的でしたが、その結果、商品情報の相違や反映タイミングのずれが生じ、顧客に提供する情報の一貫性が保てないという課題が発生していました。また、Webサイトを活用して商品情報をデジタル化しても、商品検索や比較の仕組みが整備されず、顧客が商品を探しにくい状況が続いていました。
こうした背景から、次のようなニーズに応える形でPIMが誕生し、進化してきました。
- 顧客との接点が多様化する中で、各接点で一貫した商品情報を提供する必要性が高まった
- 顧客の購入行動の変化に伴い、マーケティング活動で追加される情報が増加した
- グローバル化により、多言語や他通貨での商品情報の提供が求められるようになった
PLM・PDM・ERP・MDMとの違い
PIM以外にも製品や商品情報を取り扱うソリューションがあります。以下がそれぞれの概要とPIMとの違いです。PLM(Product Lifecycle Management)は、製品の設計から製造、廃棄までのライフサイクル全体を管理するシステムです。PLMは主に企業内部のプロセス管理を目的としており、顧客に訴求する情報は管理しません。これがPIMとの大きな違いです。
PDM(Product Data Management)は、製品設計や開発に必要な情報を一元管理するシステムです。設計図面や3DCADデータの管理・共有を通じて設計作業の効率化を図りますが、PIMのように顧客向けの商品情報の管理は行いません。
ERP(Enterprise Resource Planning)は、企業全体の資源を統合管理するシステムで、販売や在庫などの業務を最適化します。ERPも企業の内部プロセスを重視しており、顧客向けの商品情報管理はPIMに比べて重視されていません。
MDM(Master Data Management)は、企業内のマスタデータを一元管理するソリューションです。MDMはデータの整合性や排他性を重視しますが、PIMはセール期間や季節変動などの流動的な情報を商品に付加し、各チャネルで顧客向けに情報を提供する点が異なります。最近では、PIMとMDMの役割が次第に重なりつつあります。
PIMはこれらのシステムと異なり、顧客に訴求するための商品情報を包括的に管理し、流動的な情報を加えて各チャネルに提供する点が特徴です。例えば、カメラの「撮影サンプル」や建材の「施工イメージ」など、顧客が商品に興味を持つための情報はPLMやERPでは管理されません。これらの「サンプル画像」や「3Dモデル」、「動画」といった付加情報を含めて商品情報を管理するのがPIMの役割です。
PIMの主な機能
PIMの主な機能は、商品情報の総合管理、品質管理、ワークフロー管理です。商品情報の総合管理では、データを正確に管理できるよう、企業が扱う商材をカテゴリごとに設定します。属性や階層ごとに整理できるだけでなく、類似商品や関連商品も統合的に管理できるため、必要なデータを効率良く確認可能です。例えば、カテゴリを「電化製品」と設定し、その下に「電子レンジ」「エアコン」「冷蔵庫」などと分けてデータを管理します。
品質管理では、データの正確性、一貫性、完全性を確保し、情報がスムーズにデータベース化できるよう整合性をチェックします。他のデータとの関連性もチェックされ、矛盾があれば修正を促す通知が行われます。
ワークフロー管理では、データ公開前の承認業務をシステム化し、承認作業の時間や手間を省きます。PIMの商品情報は顧客に公開されるため、ワークフロー管理が慎重になる場合もありますが、これにより情報公開が遅れるリスクがあります。情報の鮮度を保つため、迅速な商品情報の提供が重要です。
機能の詳細は、「第2話 PIM(商品情報管理)製品が提供する機能」を参照ください。
PIMを活用するメリット
PIMは、人的ミスの軽減や業務の効率化、顧客の信頼度向上など、企業は様々なメリットが得られます。データを一元管理し業務効率化できる
PIMを利用することで、それまで別々のサーバーやExcelなどで管理していた商品仕様・価格・在庫などの情報を社内で一元管理できるようになります。これにより、社員がいつでもすぐにデータを確認でき、異なる部署で情報の不一致や伝達ミスが発生するリスクを抑えることが可能です。さらに、商品情報の登録や配信を自動化することで、手作業の手間を軽減し、業務の効率化につながります。PIMを導入することで、拠点や部署・組織の壁を超えて最新の商品情報が共有され、販売店や取引先からの問い合わせにもスムーズに対応できる点が大きなメリットです。
Excelで商品情報を管理している企業も多く見られますが、この方法では属人化や情報の複雑化に対応できないリスクがあります。PIMは商品情報管理に特化しており、商品の階層化により分かりやすく分類でき、詳細な商品情報の管理体制を確立できます。
マルチチャネルへの対応ができる
PIMを使うことで、元のデータベースを書き換えると、連携しているマルチチャネルを一括で修正することが可能です。これにより、実店舗とEC(ECストア)、カタログなどで商品情報が異なるといったトラブルがなくなり、利便性の向上と共に顧客からの信頼度も高まります。BtoBのマルチチャネル戦略においても、顧客に一貫性のある最新の商品情報を正確に伝えるためには、情報管理のデジタル化が欠かせません。ビジネスのオンライン化やグローバル化が進む中、顧客は紙のカタログよりもWebカタログを利用し、ECで購入することが増えています。PIMを導入すれば、商品情報の配信や設定を一斉に行うことができ、受注や売上のアップにつながります。
さらに、マルチチャネルへ連携できると、チャネルごとに手作業で行っていた情報更新が不要になり、一括での修正が可能となるため、人的コストを大幅に削減できます。膨大な情報の修正にかかる手間も、PIMの導入によって大幅に軽減できます。
スピーディーに市場投入ができる
PIMの活用により、正確かつ最新の商品情報をリアルタイムで管理・配信することができます。これにより、商品の製造から市場投入までをスピーディーに進められ、新たなビジネスチャンスを迅速に掴むことが可能になります。従来、新商品の製造から発表までには、カタログの制作や販売担当者が商品情報を習得するまでに数ヶ月のタイムロスが生じていました。しかし、PIMを導入することで情報がリアルタイムで共有され、迅速な市場投入が可能になります。
このスピーディーな市場投入により、商品のプロモーション活動も早期にスタートでき、正確で一貫性のある情報配信を通じて顧客満足度が向上します。結果として、収益の増加にもつながります。
PIMを導入すべき企業の特徴
PIMのメリットを最大限に活かすには、どのような企業にPIMの導入が効果的なのかを知っておくことが大切です。多くの商品を取り扱っている企業
商品のラインナップが多岐にわたる企業では、商品ごとの情報を逐一更新するのが困難なため、情報を一元管理できるPIMの導入が効果的です。特に、新商品の発売やリニューアル、価格変更など、情報の更新が頻繁に必要な場合、顧客に最新情報を迅速に提供するためにPIMの活用が欠かせません。PIMを導入することで、新商品情報の集約から配信までの流れを効率化し、市場投入までを短時間で処理できます。一方で、取り扱う商品が限定されている場合や、商品の入れ替えや情報更新の頻度がそれほど高くない企業では、PIMの効果があまり期待できないこともあります。ただし、今後取り扱う商品を増やしたい、販路を拡大したいといった展望がある企業であれば、PIMの導入を検討する価値があります。
多言語対応やオムニチャネルなど幅広いチャネルを必要としている企業
多言語対応が必要なグローバル企業や、複数の販売サイトを活用するオムニチャネル戦略を採用している企業では、PIMの導入が非常に有効です。多言語の翻訳機能を備えたPIMは、グローバル市場での情報管理に役立ち、どの市場でも一貫した正確な情報提供が可能になります。これからグローバル市場への進出を考えている企業にとっても、PIMの導入は欠かせません。また、オムニチャネル戦略の強化にもPIMは大いに役立ちます。顧客は、どのチャネルからアクセスしてもタイムリーな情報を得ることができ、特に製造業や流通業では、オムニチャネルの重要性が高まっています。コーポレートサイトの商品情報が充実していることが受注に直結するほど、正確な情報提供が求められています。
企業の販売規模によってもPIMの必要性は変わりますが、デジタル化を促進する日本企業にとって、PIMの導入に対する注目度は今後さらに高まるでしょう。
PIMの導入事例
これからPIMの導入を検討している企業は、導入事例を参考にして方向性を定めておくことが重要です。いくつかの導入事例を紹介します。製造系企業A社では、部品の基本情報や関連情報の一元管理や、スピーディーな情報提供が課題となっていました。PIMを導入したことで、数万点に及ぶ部品データの一括更新が可能となり、大幅な業務効率化につながっただけでなく、鮮度の高い情報の反映により顧客満足度を向上できました。
また、住宅設備を扱うB社では、商品数の増加に対応するため、新商品をスピーディーかつタイムリーに市場投入するための販売チャネルの基盤確保が課題でした。オムニチャネルを備えたPIMの導入により、商品情報の一元管理ができるようになり、全社での迅速な商品情報共有などが実現し販売チャネルを確保、収益機会の拡大につながりました。
精密測定機器の総合メーカーC社では、5,500種類以上ある商品のほとんどでITシステムによる情報管理がされておらず、紙のカタログを使って営業活動を行っていました。海外拠点や販売代理店から寄せられる、商品情報をデータで欲しいとの要望に応えるため、PIMシステムの構築に着手した結果、メーカー全体の意識改革にもつながり、DXへのモチベーションを高める効果も見られました。
PIMの導入のポイント
PIMを導入して効果的な商品情報管理を行うためには、次のポイントを押さえることが重要です。- 目的を明確にする PIMにはそれぞれ異なる機能が備わっているため、導入の目的を明確にすることが最初のステップです。目的が曖昧だと、適切なPIMを選定できず、有効活用が難しくなります。どの機能が必要かを具体的に洗い出し、それに合ったPIMソリューション製品を選びましょう。
- 社内での認識を統一する PIMは社内全体で共有するツールであるため、全員がその重要性を理解し、情報共有を進めることが不可欠です。PIMの仕組みや操作方法を関係者全員が理解し、スムーズに利用できるよう社内環境を整えることがツールの形骸化を防ぐ鍵となります。
- 操作性を確認する PIMの操作性も重要なポイントです。導入前に管理画面が直感的に操作できるか、編集がスムーズに行えるか、サポート体制が整っているかを確認しましょう。使いやすいPIMを選ぶことで、デジタル操作に不慣れな社員でも早期に操作に慣れることができます。
導入のポイントの詳細については、「第3話:PIM(商品情報管理)製品の選び方」も併せてご覧ください。
PIMソリューション製品の比較
PIMソリューション製品は以下のような特性を持ったものに分類できます。- カタログ情報管理から発展したPIM
- ECの商品情報管理から進化したPIM
- MDM(Master Data Management)から派生したPIM
- 独立系のPIM
PIM導入を検討するにあたり、どのソリューションを選択するかは非常に重要なテーマです。それぞれのPIMソリューションの特長や詳細な機能については別の機会にご紹介したいと思いますが、自社のPIM選定時の判断材料として、どこから派生したPIMであるのか?を踏まえて検討してみるのも良いかもしれません。