MDMとは? メリット・デメリット・選び方のポイントを紹介

2024.11.06  株式会社エクサ

昨今のビジネスにおいて、データを軸にした戦略が広く取り入れられており、多くの企業でMDMの重要性が高まっています。企業内でデータを効率的に運用するには、データの適切な維持や管理が欠かせません。本記事では、MDMの概要をはじめ、メリットやシステムの種類、PIM(商品情報管理システム)の紹介などをまとめています。

MDM(マスターデータ管理)とは

「MDM」は、「Master Data Management」の頭文字を取った言葉であり、日本語では「マスターデータ管理」と呼ばれます。「マスターデータ」はビジネスにおいて土台・基礎となるデータで、企業がビジネスを行うのに必要な資産であるヒト・モノ・カネに関する情報です。

マスターデータは含まれる情報のカテゴリにより、「顧客マスタ」や「商品マスタ」、「会計マスタ」などに分類されます。企業内でも基礎的かつ価値の高いデータであり、各部署で異なるシステムやアプリケーションで管理されていることが多いです。

MDMは、複数の部署が所有しているマスターデータをひとつに集約し、品質と一貫性を維持するプロセスを指します。このプロセスを実施するために使用されるシステムは「MDMシステム」と呼ばれます。

MDM(マスターデータ管理)のメリットと重要性

多くの企業では、ビジネスで顧客情報や商品情報、経理情報などの機密情報を扱っています。このマスターデータは、各部署の異なるシステムで管理されており、同じ企業内で分散して管理されていることも多いです。MDMに取り組み、マスターデータを一元化することで、業務効率化や仕事上の適切な判断につなげられます。
ここではMDMのメリットについて詳しく解説します。

一元管理によるデータ品質の向上

マスターデータの一元管理により、データ品質の向上につながります。

例えば、商品名や商品画像、マニュアル、仕入れ先などの商品情報は、販売部や品質管理部など、幅広い部署に点在していることがあります。その結果、データの重複や矛盾が生じたり、不要なデータがいつまでも残ったりするため、データ品質を高いまま維持することは困難です。

MDMによるマスターデータの一元管理は、重複や矛盾が処理され、正確なデータのみが残ります。データの信頼性が向上すると、正確なデータを探す手間が省けることから、業務効率化が実現します。

また、速やかに正確なデータにアクセスできれば、ビジネスの全貌を把握した正しい判断が可能です。その結果、意思決定の質の向上にも効果をもたらします。

サイロ化の解消と組織横断的なデータ共有

各部署で異なるシステムを運用すると、システム自体が孤立してしまう可能性があります。 他部署とのデータ連携・共有が困難になる状態をサイロ化といい、これはDXの妨げになります。
MDMでサイロ化の解消 が可能になり、必要な情報を取得するために、他部署へ連絡する手間が省けます。

また、部署を横断したデータの連携・共有ができるようになるため、企業全体の最適化が実現します。

データガバナンスの向上

「データガバナンス」の向上にも効果が期待できます。
データガバナンスとは、ビジネスでデータを効率的に運用するための管理を、企業が統制・監督することです。企業単位で方針やプロセス、基準などを定めることで、安全かつ効率的なデータ管理と運用を進められるようになります。

MDMでは、企業内に点在したマスターデータを一元管理し、企業で定められた方針などをもとに運用することができ、データの信頼性を高めます。顧客情報などの機密情報が漏洩するリスクも減り、適切な運用が可能です。

MDM(マスターデータ管理)のシステムと種類

MDMに取り組むには、マスターデータの適切な管理を維持するためのシステムが欠かせません。MDMシステムは以下の4種類に分類されます。それぞれの特徴を確認し、自社の状況に適しているものを選びましょう。

集約型

「集約型」は、各種システムで生成されているデータを収集し、集約された社内共通のマスターデータを作成する型式です。周辺システムを始点に、データを収集してまとめることから、「データ活用型」と呼ばれることもあります。

企業内に情報が点在している場合でも、マスターデータを作成しやすい点がメリットです。データの重複や不整合を処理し、一貫性のあるデータを提供できます。また、既存システムに手を加えなくても運用が可能なことから、導入のハードルが低い傾向があります。

ただし、作成したマスターデータは更新されるものの、各種システムに存在するデータまでは更新されません。最新の情報にアクセスするためには、MDMシステムでの確認が必要です。また、データの集約に時間がかかり、リアルタイムな更新は困難とされています。データの標準化には注意が必要です。

集権型

「集権型」は、各種システムが共通して運用するためのマスターデータを作成して配信する型式です。社内共通のデータベースにマスターデータを格納して管理する、トップダウンのシステムとして扱われます。

どの部署も運用が可能なので、データの整合性が高く一貫性を維持できる点が特長です。データの一元管理が実現するため、必要に応じて正確な情報にアクセスできるメリットがあります。また、データガバナンスの強化にも向いています。

ただし、柔軟性に欠ける点があり、企業全体のシステム構成を変更する必要があるなど、システム構築や運用のコストに注意が必要です。

ハイブリッド型

集約型と集権型を組み合わせたシステムです。
集約されたマスターデータを管理しますが、集約型とは異なり、マスターデータから各種システムのデータ更新も可能です。これにより、周辺システムと双方向の関係性を築けます。

マスターデータを各データソースに同期できるため、柔軟性が高いメリットがあります。マスターデータや周辺システムのデータを常に最新状態に維持するには、一定期間ごとの同期が必要なので、小中規模の企業でも取り入れやすいところが特徴です。費用対効果にも優れていますが、連携基盤が欠かせないことで、システム設計が複雑になる傾向があります。

レジストリ型

マスターデータの定義情報や所在情報など、いわゆるメタデータを管理する型式です。各部署で運用しているシステムでは、レジストリを参照することで必要な情報を取得できます。

システムの中ではシンプルな仕組みであり、柔軟性や拡張性が高いことから、各種システムとの連携が容易です。実装に時間もかからないため、扱いやすい点も特徴です。

ただし、データの整合性確保は各業務システムに依存するため、MDMシステムのみでデータを一元管理する場合に比べて、ガバナンスが難しい場合もある点に注意が必要です。

MDM(マスターデータ管理)の進め方

MDMの適切な進め方は、企業の規模や業種によって異なります。ここでは一般的な進め方をご紹介します。それぞれの段階で行うべきことを理解した上で実践してみましょう。

現状分析と目的設定

企業によってマスターデータの管理を行う目的が異なるため、まずは現状を分析します。各部署のシステムにどのような情報が存在しているのか明確にし、その上で課題を洗い出し、どのような目的でMDMを行うべきか設定します。

例えば、ECサイトを複数運営している企業であれば、各店舗に情報が点在している傾向があります。各店舗が保有している顧客や商品などの情報を収集したい場合、その都度問い合わせることは非効率です。このような場合にMDMを行い、マスターデータを一元管理できれば、速やかに必要な情報にアクセスできます。

データの整理と準備

目的の設定が完了したら、データの整理を行います。データがいくつかの階層に分かれている場合は、どの階層までをマスターデータとして運用するのかを決めることが望ましいです。

例えば、自社で製造している商品があり、「試作中」と「営業の対象」、そして「生産中」の3階層に分かれているとします。この場合、どの情報までを企業のマスターデータとして管理し、どの情報を各部署のシステムで個別に管理するかを決めることで、スムーズなデータ管理が可能です。

データを収集する際は、管理しても意味のないデータを排除するようにします。古いデータや不要なデータが混在していると、適切なMDMを行うことができません。整理された正確な情報だけを集めるための「データクレンジング」を行うことが大切です。

データクレンジングは「データクリーニング」とも呼ばれ、データの正確性を高める作業を指します。古いデータの破棄や最新データへの更新だけではなく、誤記を修正したり重複を削除したりすることも求められます。

管理体制とルールの制定

マスターデータの枠にはめるデータを決めた後は、管理体制とルールを整えます。データを更新する際のフローやバージョン管理など、データ管理に必要なルールをあらかじめ決めておきましょう。

マスターデータは、各部署のシステムからデータを収集するだけでなく、定期的に更新し、常に最新データを格納して品質を維持する必要があります。そのために、ルールに基づいてデータの追加や変更、削除などを行うことが大切です。

マスターデータは、正確かつ一貫性のある状態を維持しなければなりません。MDMでは、データの評価や不正確なデータの修正、欠けているデータの保管などを行い、データの品質を維持します。MDMシステムの運用担当者や各部署にルールを徹底させ、管理体制を整えておくことが求められます。

システムの選定と導入

マスターデータを適切に管理するためには、MDMシステムの導入が効果的です。システムの自社開発も可能ですが、開発にかかる時間やコストを考えると、専用システムを取り入れることがおすすめです。

MDMシステムにはいくつか種類があるので、自社の目的を叶えられるものを選定することが必要です。機能やコスト、導入のハードル、サポート体制、実績などを確認し、自社に適しているシステムを選びましょう。

管理するマスターデータのジャンルが決まっている場合は、特定のMDMを行うソリューションの導入もひとつの方法です。例えば、商品情報のマスターデータを管理するなら、それに特化した「PIM(商品情報管理システム)」を取り入れれば、適切な管理が実現できます。

商品マスターデータ管理ならPIM(商品情報管理システム)

商品に関するマスターデータの管理には、PIM(商品情報管理システム)の導入・運用がおすすめです。PIMは自社で保有している商品関連の情報だけではなく、販売やプロモーションに必要な情報も一元管理できます。

商品のマスターデータをPIMで管理すれば、企業サイトやECサイト、カタログなどの各チャネルと連携し、速やかな最新情報の共有が可能です。いつでも必要な情報を取得できるため、業務効率化や適切な経営判断につながります。PIMで変更された情報は各チャネルに自動で反映されるため、更新の手間もかかりません。

さらに、ユーザーの権限管理や監査ログの取得が可能な機能が備わっていると、データ流出を防ぎながらマスターデータを適切に管理できます。「利便性を高めながら、安全に商品のマスターデータを管理したい」と考えている場合は、PIMの導入・運用を検討してみてください。

まとめ

データを最大限活用しながらビジネスを推進するためには、マスターデータ管理と呼ばれるMDMが欠かせません。MDMに取り組むことで、データ品質の向上やサイロ化の解消などのメリットが得られます。

自社の目的に合う適切なシステムを運用すれば、MDMをスムーズに進められます。企業内に点在している商品情報を的確に管理したい場合は、PIM(商品情報管理システム)の導入も検討してみてはいかがでしょうか。
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