リードエンジニアブログ 『PIM選定編』
第3話 PIM(商品情報管理)製品の選び方
前回はPIM(Product Information Management)が提供する機能についてご紹介しました。今回はそれを踏まえて、どのようにPIM製品を選んでいくべきかということについてご紹介します。
自社特性からみた選定ポイント
PIM製品に限ったお話しではありませんが、製品選定にあたっては事前に自社側の状況を整理・把握しておくことで選定の軸を明確にできます。特にPIM製品の選定の場合は、自社の商品情報・業務・関連システムを事前に整理しておくことが重要です。以下にその観点での選定ポイントをあげます。
商品情報の範囲・単位
商品情報には様々な種類がありますが、どこまでの範囲を管理していくのかを整理しておきます。
例えば、付属ソフトウェア、消耗品、パーツ、付帯サービスなどを「商品」に含めるのか、「商品以外(付属品)」として区別するのかなどの判断が必要になってきます。主にECで利用する場合、カートに落ちる単位を考慮すると、付属品等も「商品」とみなした方が効果的なケースもあります。
また、商品情報の単位として、例えば「商品情報」を「ノートパソコン」と「ノートパソコン+動画編集ソフト」の2つと定義しているのか、「ノートパソコン」と「動画編集ソフト」の2つと定義しているか、によって商品の組み合わせ情報を管理する必要がでてくるため、商品情報の範囲・単位を事前に整理することが重要となります。
商品点数
商品情報の範囲・単位によって商品点数も変わってきますが、過去の商品データをどのように扱うかによっても、点数がより大きく変わってくるので注意が必要です。
例えば、販売・公開中の商品情報だけでよいので販売終了分は消していくというケースもあるかもしれません。また、購入後のサポート用にPIMに商品情報を残しておく必要があるケースもあるかもしれません。
最終的に商品点数がどのぐらいになるかで、PIM製品によってはライセンス価格や推奨システム構成が変わります。
デジタルメディア情報
商品に関連する画像やドキュメント・図面などのデジタルメディアをPIMに格納する場合、これらの大まかな個数や種類の把握も重要になります。
デジタルメディアが少ない場合はPIMのみの構成で問題ありませんが、多い場合や用途が商品情報以外にも広がる場合は、DAM(デジタルアセット管理:Digital Asset Management)も含めた構成にするなどの選択肢もあります。この場合、PIM選定の観点に、DAMとの親和性も必要となってきます。
商品情報取り込み時のシステム連携
商品情報をPIMに格納するにあたり、既存の商品データを管理している自社システムとの連携が必要になる場合があります。それらのシステムとPIMとの接続親和性も選定要因に挙がります。
出力してもらった中間データを取り込む方法で対応できるケースは多いですが、連携頻度やリアルタイム性などによっては、より密に接続できることが重要となります。また、取り込む際にデータの加工が必要であったり、データチェックが必要なケースもあります。そういった加工・チェック処理をどこで行うかというのもPIMを選ぶ際の判断材料になります。
商品情報の連携先となる業務・システム
PIMに格納した商品を使用する側の業務やシステムについても事前に整理しておくと良いと思います。
カタログ編集に使用する場合は、専用のソフトウェアとの連携や、Web画面用の画像だけでなく印刷品質の画像の管理ができることなどが必要です。
ECに連携する場合は、例えば適用開始日を指定した複数の価格情報が必要だったり、セールなどの販売用カテゴリーとの関連付けなどが必要になるケースがあります。
また、グローバルで商品情報を公開する場合、公開可能な地域の制限や、国別の規格情報の制限などのルールに従って連携する情報のフィルターが必要になります。この点もある程度事前検討しておくことで、PIM製品とのFit/Gapが明確になります。
商品情報管理業務
誰がどのタイミングで商品情報を登録・編集するのかなどのイメージがあると、PIM製品に求める機能性がよりクリアになります。
基本的にシステムからの連携で商品情報が登録出来て、編集者が一部編集するだけで済む場合は、編集画面よりインターフェースの機能性のほうが重要です。
編集者が少数のメンバーなので効率的な編集方法が必要となる場合は、一括更新機能が必要となるかもしれません。
使いやすそうな編集画面と、効率的なインポート機能、両方最高級を求めるというのも一つの判断ですが、どちらが優先かを考えておけば、選定の際の判断材料になります。
他にも、商品情報の承認フローや、他のシステムへの連携方法など、自社にとって必要な管理業務や将来構想を大まかにイメージしておけば、より選定しやすくなります。
以上がPIM製品選定の事前準備として、自社状況の整理・把握をすべきポイントとなります。
PIM製品特性からみた選定ポイント
自社の商品情報、外部システムとのインターフェース、業務との整合性など、事前に準備した内容との合致度を見ていくと、どの製品が適しているかが見えてくると思います。ここでは、選ぶ対象となるPIM製品自体の特性からみた選定ポイントをご紹介します。
製品の「標準機能」
PIMで実現したいことに対して、製品機能がどの程度合致しているかは重要なポイントとなります。標準機能について、例えば「インポート機能」は各PIM製品が持っていますが、実装されている機能はそれぞれ異なります。対応するファイル形式や、データの更新・削除ができるか、加工やチェックができるか、トランザクションに対応しているかなど、実現したいことがより具体的になれば、合致度を判断しやすくなります。結果、カスタマイズが必要というケースもありますが、製品の「標準機能」でどこまでカバーできるのかは重要なポイントです。
いざというときの「機能拡張性」
どうしても必要な機能がPIM製品で提供されていない場合、カスタマイズで対応できるかという点も重要です。外部システムとの連携で対応が可能なケースもありますが、そうではない場合はPIMのカスタマイズが必要となります。
前述の内容と矛盾しているように見えますが、どうしても実現したいことに対しては、カスタマイズができるということは重要なポイントと考えています。もちろん、カスタマイズをせずに業務を変えることができるかどうか、という検討も重要ですし、カスタマイズをするのであれば、製品バージョンアップに追随できるうよう影響を最小限にするための考慮が必要です。
導入後の「将来性」
PIMの運用が開始され商品情報が充実してくると、利用範囲や管理対象を増やしたくなったりします。その際にPIM製品に拡張性があることが重要となり、拡張性に制限があると実現が困難になります。
先々どこまで拡大していくかというのを全て考えておくのは不可能だと思いますが、選定に際してある程度は考慮するポイントだと思います。
機能が非常に豊富なPIM製品を選定するのも一つの解ではありますが、実際のところ、自社業務にあわせると、全機能を使いこんでいるケースは少ないと感じており、将来性とのバランスを考慮した選定が必要になります。
製品の「ロードマップ」
PIM導入の理想は製品をカスタマイズせずにそのまま導入できることです。それができれば将来のバージョンアップが容易となり、より高度な新しい機能を常に利用することができます。SaaSで提供している製品はよりその傾向が顕著です。場合によっては、PIMでやりたいことが次のバージョンで実現できるかもしれません。
そういう点において、製品のロードマップも一つの選定ポイントになりえます。
お客様にとって製品を選定するということは非常に難しいプロセスだと考えています。お客様側でPIM製品を決定した後にプロジェクトに参画したこともありますが、その際は今回あげた選定ポイントに関連する課題に直面したケースが多々ありました。これらの経験から、製品選定の際には、自社の商品情報を使ったPIM製品の動作や操作性を確認するための詳細なデモをしてもらうというのも有効な方法だと考えています。また、可能であれば、PoC(Proof of Concept)を実施するのも、労力はかかりますが効果的です。
弊社では検討段階からご支援するサービスもご用意しておりますので、より早期のタイミングでご相談いただければと思います。