コロナの影響もあり多くの業種でオンライン化が加速しました。小売業ではECシフトが加速し、ECの売上比率が増加し続けています。BtoC市場においては、コロナ以前から多くの企業がECやオンラインマーケティングを展開しており、オンライン化に対応する準備が比較的整っています。しかし、BtoB市場においては、まだまだオンライン化の対応ができていない企業が多いのではないでしょうか。オンライン化対応が進まない要因は様々ありますが、その一つとして商品点数が多く、それらをデジタルデータ化して管理することが困難であることが挙げられます。
エクサでは、これまでに様々な業種のお客様に商品情報管理ソリューション(PIM:Product Information Management)を導入してきました。今回は、商品データの管理にフォーカスして、PIMを導入するための準備や考慮点を紹介します。
PIM導入前の商品データの管理と課題
PIMで商品データを管理するにあたって最初に検討しなければいけないことは、現状どのように商品データを管理しているかを把握することです。商品データには、以下のような多種多様な情報があります。
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型番や商品名などの基本情報
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商品のスペック情報
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販売や生産のライフサイクル、原産地、適合規格などの情報
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価格や販売地域の情報
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商品説明などのマーケティングメッセージ情報
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画像、動画、マニュアル等のメディア情報
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オプション商品、後継商品などの関連情報
これらの商品データは1つのシステムで一元管理されていることは少なく、ERPやPLMなどいろいろなシステムに分散されていることが多いです。また、すべてがシステム化されて整理された状態で管理されているとは限らず、部門の共有フォルダに雑然と置かれており担当者でないと情報に辿りつけないことも多々あります。
データの管理方法もシステムや部門毎に異なっており、大きくわけると以下の3パターンがあります。
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データベース(DB)
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Excel
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紙やPDFカタログ
この中で、DBで管理されているデータをPIMに移行するのが最も容易です。ただし、注意点としては、DBにどのような構造でデータが格納されているか分からず、データ移行の検討が進まないということがあるので、DBを管理しているシステム部門の担当者に要件を詰める段階から入ってもらうことが大事です。
ExcelもETLツールなどを使ってデータが取り出せるので、比較的移行しやすいと思われるかもしれません。しかし、実際にExcelファイルのデータを確認すると部門毎にフォーマットが異なっていたり、同じ部門でもフォーマットが少し異なるバージョンが多数存在したりして、すんなりPIMに入れられないケースが多いです。そのため移行前に手作業で統一フォーマットに変換するなどの対応が必要になる可能性があります。
紙やPDFカタログは、人が見るにはとてもわかり易いのですが、PIMに取り込むのは非常に困難です。印刷用に整形されておりOCRで読み込んで処理することもほぼ不可能なため、人手でデータを抽出してExcelなどにまとめるということが必要になります。
PIMで商品データを管理するための準備
現状の商品データを把握できたら、次はPIMに商品データをどのように格納し、管理するかを検討します。商品データとして挙げた型番などの情報は、PIMでは属性として管理します。属性は、格納される値が、数字なのか文字列なのか日付なのかといったデータ型の定義が必要です。データ型は、商品データを活用するために重要になります。例えば、高さが〇〇メートル~△△メートルの商品を探すとか、発売順で商品を表示したりするためには、適切なデータ型を定義しておく必要があります。
データ管理:名寄せと型
属性を決めるにあたって課題になることは、属性名の名寄せとデータ型の決定になります。商品のスペック情報などは、同じ属性であるにも関わらず商品ごとに異なる名称で管理されている事があり、名寄せを実施しないとよく似た属性が多数できてしまいます。異なる製造部門で作られている商品の名寄せを実施しようとすると、各部門で名称にこだわりがあったり、既にカタログ等で使っている名称のため変えられなかったりということがあります。これらの問題は部門間で調整しても結論に至らないことが多いため、トップダウンで方針を決定できるメンバーが検討チームに参画しているのが理想です。また、データ型を決めるにあたっては、多くの商品では数値で管理されているのに、一部の商品では文字列でしか表現できない場合が出てきます。この場合、数字での範囲検索やソートなどは諦めて文字列として管理するか、数値と文字列で別の属性にするかといった検討が必要になります。そのほか、条件付きの値の場合、注釈文のデータをPIMでどのように管理するかも、悩ましい問題になります。
データ管理:階層構造
そして、属性の定義が完了したら、その属性をどの階層で管理するかを検討する必要があります。階層とは、ツリー構造で商品データを管理し、共通の属性を上位層で一元管理するための仕組みです。例えば、TVという階層があり、その下にスマートTVという階層、そしてその下で個々の商品を管理するとします。全てのTVに共通で存在する属性はTV階層に定義し、スマートTV特有の属性はスマートTV階層に定義します。そうすることで、スマートTVの下に格納した商品にはTVの属性とスマートTVの属性の両方が含まれるようになります。階層を定義するにあたっての課題は、商品のバリエーションが多い場合に、どの単位で階層を定義すべきか判断が難しいことです。商品を大まかに括って階層を定義すると、属性が多くなりすぎて商品によっては存在しない属性ばかりになってしまいます。逆に細かく括って階層を定義すると、どの階層にどの属性を定義するかの検討に膨大な時間がかかるのと、新商品が追加されるたびに新しい階層の定義が必要になり運用が煩雑になるといった課題が発生します。
PIMで管理した商品データを活用
現状分析し、PIMの属性や構造を定義して、商品データをPIMに管理できるようにしてもそれだけでは何も利益を生み出しません。商品データをPIMで管理できるようにしたら、その商品データをECシステム、Webシステム(CMS)などマルチチャネルに連携して活用していく必要があります。PIMには、メジャーなECシステムやWebシステム(CMS)と連携するためのコネクタが存在しているため、これらの連携は比較的容易に構築できます。コネクタがないシステムとの連携でも、CSVやXMLなどの汎用的な形式で商品データを出力できるので、ほとんどのシステムで取り込むことが可能です。また、グローバル対応の必要性がでてきたときも翻訳システムと連携して翻訳し、翻訳結果のデータもPIMで一元管理できます。
あらゆる業種でオンライン化が普及し、変化する顧客接点に素早く対応するには、商品データが整理された状態で管理され、営業やマーケター、そして各種システムから容易に利用できる必要があります。PIMを導入することで販売に必要なデータはいつでも容易に取り出せるようになり、新規チャネルへの対応やタイムリーな情報発信など時代の変化に応じて適切な施策が講じることができるようになります。
まとめ
今回は商品データの管理という視点で、PIM導入に向けた課題や考慮点を紹介しました。商品データの管理は、商品データをPIMという入れ物に入れるだけで、一見簡単そうにみえるかもしれませんが、実際やってみるといろいろな課題にぶつかり思うように進まないものです。エクサでは、多種多様のお客様とともに商品データの特性を分析してPIMに取り込み、管理する仕組みを構築してきました。商品データの管理・活用について悩んだら、ぜひエクサにご相談ください。