企業がデータ分析を活用してビジネスの最適化を図るためには、システムごとに分散しているデータを連携する必要があります。データ分析に必要な作業の中でも、最も問題になるのがデータを収集し、利用可能な状態に加工するためのプロセスです。
企業のシステム環境は長らく個別最適化が進んできたので、それに伴ってデータも複数のシステムやアプリケーションに分散されています。分析に必要なデータがどこに保管されているか分からない、データ形式が異なり統合できないなどの問題によってデータ分析が困難になっています。
大切なのは、こうした問題を解消するための「データ連携の仕組み」です。本稿では、データ分析に取り組みたいと考えている経営者や担当者に向けて、データ連携の重要性と連携のメリット、データ連携時の課題について紹介します。
データ連携とは?
データ連携はシステムやアプリケーションごとに保管されている異なるデータを、統合的に共有・活用することを意味します。数年前に"ビッグデータ"が流行してから、データ分析の重要性について考える企業が増えています。多くの企業が、「今まで蓄積した大量のデータを分析すれば、利益に繋がるような知見を発掘することができるかもしれない」と考え、データ分析に取り組んだことでしょう。しかし、それ以前に、複雑化したシステム環境においてデータ連携が困難なことが、大きな問題となっています。
データ分析は、必要なデータを必要な時に収集・加工をして、タイムリーに分析することで初めて最大限の価値が生まれます。たとえば、売上データを分析するにしても、1ヵ月や2ヵ月前のデータを分析しても意味はありません。大切なのは今のデータであり、タイムロスを極力少なくすることでタイムリーなデータ分析を実現し、そこから得た知見をどんどんビジネスに活用することです。
データ連携のよくある課題
データ連携と聞くと一見簡単に思えますが、実際は多くの課題を抱えています。その課題について1つ1つ確認していきましょう。
1.システム環境が複雑すぎる
日本企業のシステム環境は、メインフレームからクライアント/サーバーシステムへ移行してから"個別最適化"が進みました。部署ごとに最適なシステム環境が構築されたことで、部署内の業務効率は確かに向上しましたが、その代償として全体最適化への道が絶たれています。
部署ごとに最適化されたシステム環境は、それぞれに独立したインフラが構築されていることもあり、全体的なデータ連携を難しくしています。各システムで生成されるデータはすべて独自のフォーマットで管理されており、データを統合するためには、相当量のプロセスが必要になってしまいます。
2.クラウドサービスとの連携が難しい
クラウドサービスが急速に普及しているとはいえ、新しく導入されるシステムの半数以上は、未だにオンプレミスで構築されています。多くの企業では、オンプレミスとクラウドサービスが混在しており、両者のデータ連携が必要になっています。しかし、オンプレミスシステムごとの連携プログラムの開発は、コストに加えてセキュリティポリシーの観点においても現実的ではありません。
3.手作業でのデータ入力がある
業務管理用のExcelドキュメントを担当者が手作業でメンテナンスし、システムにデータを登録しているというケースは多々あります。手作業のデータ登録は、入力ミスやデータの不整合が生じるという問題以外にも、データ連携をシステム化する際の阻害要因にもなります。
データ連携のメリット
部署ごとにシステム環境が独立していることをサイロ化といいます。これが進むと、データ分析の際に欲しいデータの所在が分からなくなってしまったり、見つかったとしてもデータの形式が異なったりしているため、データを組み合わせて活用することができないなどの問題が出ます。データ連携はこうした諸問題を解決するための手段になり、さまざまなメリットがあります。
データ統合による集計・加工の簡素化
データ連携を行うと、サイロ化によって部署やシステムごとに散在しているデータを、簡単に組み合わせて活用できるようになります。複数のシステム環境に散在する商品データ・取引データを連携することで、営業効率を高めることができ、開発コストを削減することができます。
さらに、多くのデータを集めて統合すれば、よりビジネスに貢献するインサイト(洞察)を手に入れることが可能です。
データ統合による情報の見える化
データを統合することでさまざまな情報の見える化が可能になり、現状把握が行えます。たとえば、販売データを統合すれば各店舗の来店者数や顧客属性、店内の滞在時間等のデータを見える化することが可能です。この他にも、物品の流通経路を生産から最終消費まで見える化し、全段階で追跡可能にすることで、バリューチェーンの全体最適化を図るという活用方法もあります。さらに、分析ツールを組み合わせることで、新しい見える化を実現することができます。
データ連携の方法とは?
データ連携の方法はさまざまなものがあります。近年注目されている方法としては、ERP(Enterprise Resource Planning)があります。ERPとは、部署ごとに最適化していたシステム環境を統合的に提供し、データ連携を容易にするためのシステムです。
生産管理システム、販売管理システム、購買管理システム、在庫管理システム、人事管理システム、会計管理システムなどの基幹系システムをはじめ、この他の情報系システムを統合したERPではさまざまなデータを一元的に管理することができます。各システム環境は相互に連携が取れており、データの受け渡しが非常にスムーズです。さらに、データが単一のデータベースで管理されるため、データ分析に必要な収集や加工といったプロセスを簡素化することができます。
ERPにBI(Business Intelligence)などのデータ分析ツールと連携することで、データの収集・加工から分析までのプロセスを自動的に行うことができます。それだけでなく、組織全体の業務プロセスを最適化することによって、今まで個別最適化が進められてきた現場に全体最適化の概念を取り入れて、生産性を大幅に向上できます。
ただしERPに限らずデータ連携の方法は他にもあるため、データ連携を実行する際は自社環境の評価から始めて、最適なデータ連携方法がとれるようにしましょう。