データ活用とは
データ活用とは、データをさまざまな視点から分析し、業務の効率化や経営の意思決定などに役立てることです。英語では、data utilizationなどの呼称が使われます。企業が生成・収集する多種多様なデータの中には、ビジネスチャンスにつながる貴重なインサイト(洞察)が含まれています。企業はデータを可視化・分析することでインサイトを明らかにし、個々の顧客に対するマーケティング施策のパーソナライズからビジネス上のリスクの特定や改善まで、あらゆる面で役立てることが可能です。
昨今、日本政府は企業にDX(デジタル・トランスフォーメーション)の実施を呼びかけていますが、DXにおいてもデータ活用が不可欠です。こうしたことから経済産業省でも、『データ利活用のポイント集』などの資料を公開して企業のデータ活用を推奨しています。
(参照元:https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/datapoint.pdf)
データには定性データと定量データの2種類がある
データには、大きく分けて定性データと定量データの2種類が存在します。
定性データ(質的データ)とは、数量化できないデータのことです。この商品を購入した決め手は何かなど、明確な数値で表せない情報を説明するために用いられます。たとえば本棚の購入者に対するアンケートを例にとると、「なぜその本棚を購入したのか」という問いと、「文庫本の収納に適した本棚が欲しかったから」という顧客の答えも定性データに該当します。
対して、定量データ(量的データ)とは、数量化可能な種類のデータです。Excelなどのスプレッドシートで管理するような数値がこれに当たります。
データ活用の基本的なポイントとして、定性データと定量データの違いを理解して使い分けたり、組み合わせたりすることが欠かせません。定量データは数値という客観性に長けた形で使用できるため、分析しやすく、分析結果に対しての認識の共有も容易です。しかし、いくら「あの本棚はほかの本棚より10%多く売れている」と定量データから事実関係を明らかにできても、「なぜその本棚が売れているのか」という理由は説明できません。その理由を知るためには、「本棚のデザインが良かったから」など、定性データの分析が必要になるのです。
その反面、定性データには主観や感性的な要素が入り込みやすく、定量データに比べてデータ分析が難しいという性質を持っています。とはいえ、近年ではAIなどのデータ分析技術の発展を受けて、定性データからも効率的にインサイトを抽出しやすくなっています。
表 1「定性データと定量データ」
データの活用方法
続いては、データ活用の基本的な方法や流れを解説していきます。
1.データを可視化
データ活用において最初になされるのが、どこにどのようなデータがあるのか、データをアクセス・分析可能な形に整備することです。その上で、データそのものに対しても、その意味が一目で理解しやすいようにグラフやダッシュボード形式に置き換えたりすることで可視化(見える化)します。
2.データから気づきを得る
整備されたデータを分析し、そこからビジネスに役立つインサイトを抽出します。たとえば、あるビジネスプロセスを成功または失敗に導いている規則性・傾向性・因果関係・相関関係、あるいはビジネス上のトラブルに結び付きそうな異常値などがその例です。
3.データを基に戦略を構築する
上記のインサイトを関係者間で共有し、それに対応するビジネス戦略を構築します。たとえば、ビジネスに良い結果を生む規則性や傾向性が見出されたなら、それを促進するような施策を実行します。また、この際は次のフェーズで効果検証しやすいようにKPIなども明確に設定することが大切です。
4.効果検証する
上記で実行した施策の効果を検証します。事前に立てたKPIを予定通り達成できているか、もし計画通りにいかなかった場合はその要因を分析します。この効果検証をしっかり行うことで、次の施策にもそのデータや経験を活かしやすくなります。
データ活用のメリット
データ活用のメリットとしては、主に次のことが挙げられます。
短期間で現状を把握できる
今日のビジネスプロセスは非常に複雑化しているため、すべてを人間の目で直接見通すことは困難です。しかしデータの整備を常に行い、分析できる体制を構築することで、不確かな勘や直感に依存せず、客観性の高いデータに基づいて短期間で現状把握をすることが可能になります。
課題解決や新たなビジネスのヒントになる
データの可視化・分析を丹念に行うことで、数字の変化や傾向などを明らかにできます。これによってさまざまな予測がしやすくなり、将来を見越した戦略を打ち出すこともできます。つまり、データ活用を行うことでビジネス上の課題解決や、新たな事業展開を効率的に行いやすくなるのです。
デジタルマーケティングにおけるデータ活用の必要性
ビジネスにおけるデータ活用の最前線のひとつがデジタルマーケティングの領域です。以下では、デジタルマーケティングにおいてなぜデータ活用が必要なのかを解説します。
精度の高いターゲティングが可能になる
精度の高いターゲティングを行うためにはデータが必要です。顧客の購買履歴や行動データなどを分析することで、各顧客の購入傾向や嗜好、あるいは購入に至るまでのプロセスなどを明らかにでき、より効果的なターゲティングがしやすくなります。
複雑化したユーザーの行動を適切に捉える
複雑化した顧客の行動プロセスを把握するにはデータ活用が欠かせません。インターネットやスマホ、SNSなどの普及により、顧客接点の多様化と顧客行動の複雑化を呼んでいます。しかし、顧客がサイトに残した記録などを追跡することで、その行動パターンなどを割り出すことが可能です。
データ連携基盤の構築がデータ活用を促進する
データ活用を行う際に助けとなるのが、データ連携基盤の構築です。以下では、データ連携基盤とは何か、それがどのようにデータ活用を促進するのかを解説します。
データ連携基盤とは
データ連携基盤とは、企業内のデータを収集・加工して各システムで共有できるようにする仕組みのことです。企業においては部門ごとに個別最適化されたさまざまなシステムが使われており、そこで利用されているデータもまた、システムごとに散在していることが少なくありません。
しかし、データ活用を行うためには、企業が保有しているデータを一元的に管理活用できる体制を整備する必要があります。その際に役立つのがデータ連携基盤です。データ連携基盤を導入することで、企業は個別最適化された既存のシステムや業務プロセスを保持したまま、システム間のデータの受け渡しをスムーズに行えます。
図1「データ連携基盤」イメージ
データ連携基盤に必要なモジュール
データ連携基盤を効果的に機能させるには、いくつかのモジュールが必要です。代表的なモジュールとしては、ファイル転送システムやデータ圧縮システムなどが挙げられます。
ファイル転送システムとはシステム間でデータの通信を高速で行うために活用されるツールです。ファイルの容量や転送距離などに左右されず、スムーズにファイル転送を行うことを可能にします。
データ圧縮システムとは、膨大な量のデータを圧縮保存するためのシステムです。データ連携基盤を構築すると膨大なデータの蓄積が可能になりますが、ストレージの圧迫を生むことにもなります。そこでデータ圧縮システムを使うことで、ストレージの容量やコストを抑制することが可能になるのです。
これら以外にも、分散ファイルシステムやデータ変換システムなど、データ連携基盤に応じてその他のモジュールが必要になります。データ連携基盤を活用する際には、自社の求める機能要件を十分に検討した上で、必要なモジュールを導入することが大切です。
まとめ
デジタル技術の発展とともに顧客行動が複雑化している昨今、データ活用の必要性はますます高まっています。データ活用を行うに際しては、システムごとに散在するデータをフル活用するためのデータ活用基盤を構築する必要があります。本記事を参考に、ぜひデータ活用を促進してください。
こちらの資料のSection2では、Webサイトデータの分析について解説しています。デジタルマーケティングにおいて重要な顧客接点であるWebサイトから得られるデータをどのように活用していけばよいのか、ヒントになる情報があるかもしれません。参考になさってみてはいかがでしょうか。