ビジネスには常に戦略が必要ですが、価格設定を戦略的に実施している企業はどれぐらい存在するでしょうか。特に製造業などでは製品構成が複雑になりやすく、柔軟な価格設定を難しくしています。
そこで本記事では、価格設定プロセスが持つ課題やその簡素化について、ご紹介します。この機会に「戦略的な価格設定とは何か?」を考え、自社の価格設定プロセスを見つめ直すきっかけにしていただきたいと思います。
価格戦略とは何か?
価格戦略は、初めにジェローム・マッカーシーという米国のマーケティング学者が提唱した「マーケティング・ミックスにおける4P」にて定義されたもので、戦略的な価格設定プロセスを構築することで市場シェア拡大や収益向上などを目指すためのビジネス戦略です。
4P:製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)
製品価格を決定する際に、「原価に利益を上乗せして価格を設定する」ことが多いかと思います。しかし、そうした画一的な価格設定プロセスは戦略的とは言えず、製品市場や顧客を意識していない企業側の価値観だけで決定しているものです。
本来、価格(Price)設定プロセスはマーケティング・ミックスにおける製品(Product)・プロモーション(Promotion)・流通(Place)と同格であり、ビジネス戦略と絡めることで市場シェア拡大や収益向上などを達成できるものです。
さまざまな価格設定プロセス
価格設定プロセスとして「予算編成⇒販売計画⇒目標利益⇒原価計算⇒価格策定」といった具合に、トップダウン形式で製品価格まで落とし込んでいっている企業が多いかと思います。実際のところ、価格設定プロセスは一様ではなく、実にさまざまな方法が存在しています。ここではその方法をざっくりとご紹介します。
市場セグメントを重視した価格戦略
市場セグメントを活用して価格戦略に反映することで、売上拡大の可能性を大きくできます。
値引きキャンペーンで2つのプライシング
価格戦略として同じ製品に2つの価格を設定します。通常は高い価格を設定しておき、キャンペーンに応じて安い価格で販売します。値引きキャンペーンを意図的に実施する価格戦略です。
製品販売からの経過に応じたプライシング
製品の販売開始時には高い価格を設定し、時間の経過と共に価格を引き下げていく方法です。製品市場において、価格に関係なく購入するコアな消費者と、価格に敏感な消費者層がそれぞれ存在することを条件に適用します。
自社の提供能力に応じたプライシング
提供能力や生産能力の余力がある際に、メインのターゲット層とは異なる消費者層に対し、通常よりも安い製品価格を設定します。たとえば、ソフトウェア製品を学生向けに安く提供する場合などが挙げられます。
企業ポジショニングによる価格戦略
企業や製品の市場におけるポジショニングによって価格設定を変えることで、製品の特性を活かした販売が行えます。
高いプライシングと値引き
比較的高めに設定された「メーカー小売希望価格」に対し、値引きした金額を設定する方法です。中程度の品質の製品でも、メーカー小売希望価格が高額だと品質が高いと感じ、かつ値引きされていると「お買い得」と感じる心理を突いています。
市場シェア拡大を目的としたプライシング
市場参入当初は製品価格を下げ、より多くの消費者に買ってもらえるようにします。その後、市場シェア拡大に伴って生産や販売にかかわるノウハウ・経験を活かし、他社よりも価格面でビジネスを有利に展開する方法です。
地域別のプライシング
市場競争が激しい地域では価格を下げ、競争が少ない地域では価格を上げて設定します。その上で競争が最も少ない地域での市場シェア拡大を目指し、事業利益の創出を図る方法です。
製品ポートフォリオによる価格戦略
自社製品同士の関係に着目しながら価格設定を行い、売上拡大を目指します。
ブランドイメージからプライシング
品質が似通った製品にあえて異なるブランドを付けて価格設定をします。一方の製品は広告等でブランドイメージを高め、より高い価格を設定することで差別化を図りながらの売上拡大が見込めます。
複数製品を抱き合わせたプライシング
複数個購入すると、単品購入よりも単価が安くなるように価格を設定する方法です。パソコンとソフトウェアのように、補完関係にある製品を組み合わせることで、価格面で有利に立てます。
本体・消耗品を組み合わせたプライシング
主製品の価格を安く、付属製品や消耗品の価格を上げることで利益確保を狙う方法です。コピー機、プリンター、髭剃りなどが主に該当します。
フィリップ・コトラーの価格設定プロセス
前述したマーケティング・ミックスはジェローム・マッカーシーが提唱して以来、何人かのマーケティング学者によって訂正が加えられています。その中の1人であるフィリップ・コトラーは、さらに物的証拠(Physical evidence)、プロセス(Process)、人(People)を加えた7Pを提唱しています。このフィリップ・コトラーが価格戦略において提唱している価格設定プロセスの概略は以下の通りです。自社の価格設定プロセスと照らし合わせてみてください。
① 価格設定目的の明確化
価格設定をする目的は何か?たとえば、利益の最大化、市場シェア拡大、品質のリーダーシップなどが考えられます。
②需要の判断
設定した価格に対してどの程度の需要が見込めるか?価格を上下させると、需要がどのように変動するのか?その上で強気な価格設定が可能な製品は何かを考える。
③コストの評価
売上予測が立った時点でコスト評価を行い、どの程度の利益が期待できるかを明確にします。固定費・変動費の大枠で分析し、変動費が増加することで利益率が低下する点に注意します。
④競合他社のコスト、価格、オファーの分析
競合他社の製品にかかっているコスト、価格と自社のそれを比較し、妥当性を検討します。また、競合他社の消費者に対するオファーを自社のオファーを比較検討し、妥当性を検討します。
⑤価格設定方法の選択
前述した方法などから価格設定方法を選択します。
⑥最終価格の選択
以上のプロセスを踏まえて、最終的な価格を設定します。
これらの価格設定プロセスは非常にシンプルながら、価格戦略の要所を押さえた内容になっていることから、①~⑥のプロセスに従って価格設定を行うことで、妥当性の高い製品価格を設定できます。また、目的や製品特性に応じて価格設定を変化させるというのが理にかなっており、どんぶり勘定ではなく戦略的な価格設定をサポートするプロセスです。皆さんの会社の価格設定プロセスと異なる部分があれば、適宜採り入れてみてください。
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