データ統合の必要性は依然として増しています。しかし、データの爆発的な増加と、データ発生場所の広域化によって、データ統合作業は困難となっているのが実情です。こうした中でもデータ分析によりビジネスに有用な知見を発掘したり、他社との差別化に向けた取り組みは必須だと言えるでしょう。
本稿では、データ統合作業の遂行を求められているIT担当者様に向け、データ統合基盤について整理しつつ、その目的と構築方法を解説します。
データ統合はなぜ難しいのか?
データ分析の重要性は、基幹業務に関わるものだけではなく、開発・生産・物流・営業・マーケティング・カスタマーサービスなど、あらゆる場面で高くなっています。これらの領域にもIoT(Internet of Things)やモバイル化の波は押し寄せており、そこで生成されるデータの活用次第によって、企業の競争力が決定すると考えられています。
しかし、ビジネスのデジタル化は進んでいても、データ活用の難しさは依然として変わらないままです。なぜデータ統合はそこまで難しいのでしょうか?その理由をまとめたいと思います。
1. 個別最適化が進み過ぎた結果、データ統合が難しくなった
部署ごとに専門のシステムを導入し、部署ごとに業務の効率化を図る。かつての日本では、個別最適化こそ理想的なシステム環境の姿だと考えられ、多くの企業で推し進められてきました。しかし、それぞれに独立した環境を持つシステムは、互いに干渉し合うことを拒みます。異なるシステム、異なるソフトウェアベンダーで構成された組織のシステム環境は、データ統合を行うにはあまりに複雑になり過ぎているのです。
データ統合には各システムからのデータの収集・加工が必要です。ところが、システムごとにデータ形式が異なっていることから、IT担当者が自ら手作業でデータ形式を合わせて、分析システム等に再入力しなければいけない状況になっています。これが、データ統合を難しくし、タイムリーな分析を不可能にしている根源です。
2. 常に変化するデータを追うことができず、適切なデータ統合が難しくなる
顧客情報などその都度内容が変わるようなデータに関しては、その変化を追って常に最新の状態を保つ必要があります。特に営業やマーケティングのように顧客情報が生命線となる分野においては、最新の顧客情報を持ってセールスや販促活動を行うことが最良の結果を導くでしょう。
しかし、すべての営業システム・マーケティングシステムが顧客情報を最新状態に保てる機能を備えているわけではありません。Excelドキュメント等で管理している場合はなおさら、顧客情報の名寄せや適切な排除などは難しく、古いデータばかりが管理されています。適切にデータを統合できなければ、それらのデータに分析する価値はありません。
3. 多くの企業がレガシーシステムを運用しており、データ統合基盤を構築できない
日本では、21年以上同じ基幹系システムを運用している企業が約2割いるとされています。これが2025年になると、6割に達するということが、経済産業省が取りまとめた『D X レポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』で紹介されています。レガシーシステムは大量のアドオン開発によりシステムとしての柔軟性を欠いていることが多く、データ統合にはさらに大量のアドオンが必要になる可能性があります。
古いシステムを運用し続けることで、技術面だけでなくビジネス面でも競合他社に後れを取り、更に、レガシーシステム同士の連携によるとコストの肥大化、システムの複雑化を招きます。
データ統合による素晴らしいメリット
データ統合はメリットばかりではない、ということは誰もが承知している事実です。しかし、それを考慮しても有り余るほどのメリットがデータ統合にはあります。
経営情報などあらゆる情報の可視化
データ統合最大のメリットは、統合されたデータを分析することで経営の"今"を知ることができることです。経営者が常に欲している経営情報はもちろん、営業、マーケティング、生産、物流などあらゆるシーンで情報の可視化を提供します。タイムリーな可視化情報こそ大きな武器になるとされている現代ビジネスにおいて、データ統合による情報武装はビジネスに数多くの発見と気づきを与えてくれます。
情報管理に関わるコストを削減
部署ごとに情報を個別管理することは、実はコストがかかります。システムの数だけデータ管理担当者を作る必要がありますし、データ活用に間接作業が多くなるため、その分コストの増大と業務効率の低下が起きるのです。データ統合を実現した環境ではそうした問題は起きません。データ管理に関わる担当者は今までよりも少なくなりますし、間接作業も無くなります。情報管理にかかわるコストを削減することで、より大々的にデータ分析にリソースを費やすことができるでしょう。
BIとの連携によるデータ分析の自動化
BIとは、データ専門家の手を借りなくとも、社内リソースだけでデータ分析を行いそこからさまざまな発見や気づきを得ることを支援するツールです。BIとの連携が素晴らしいのは、データ分析を半自動的に行い、タイムリーな情報可視化によってさまざまな知見をビジネスに素早く反映できることです。多種多様なBIが提供されている現代において、データの蓄積と自社に合った製品を選択できれば、いろいろな角度からのビジネス状況の把握と次なる施策の検討を手助けすることができるでしょう。
データ統合基盤を構築するには?
問題は、データ統合基盤を如何にして構築するかということです。多くの場合、データ統合基盤は既存のシステム環境を利用するのではなく、システム環境を刷新した際に行われます。代表的な製品がERP(Enterprise Resource Planning)です。
ERPには経営上欠かせない基幹系システムが統合されており、各システムではスムーズなデータの受け渡しがされるため、業務効率を大幅にアップさせることができます。それだけではなく、単一のマスターデータによってあらゆる情報を管理することで、データ分析に必要な統合・加工という作業を簡素化し、データ分析に必要な時間を大幅にカットしてくれます。
製品によってはあらかじめBIと連携されているものもあり、ERPを導入したその時から画面上で経営情報などを可視化することができ、表示する情報のカスタマイズも可能です。ERPというと導入コストが高額というイメージを持たれがちですが、それは旧来のERPにおいて大量のアドオン開発を必要としたためです。
今では、ERPの標準機能で対応できる業務も多く、特殊なケースを除いてはアドオンが肥大化することはありません。昨今のデータ統合基盤の主流になりつつあるので、この機会に是非ご検討ください。