文書管理システムを導入することで、組織内に点在する紙書類や電子データファイルを一元的に管理して、文書検索性を高めたり、セキュリティを強化できたりします。しかしながら、昨今のエンタープライズ企業において管理すべき対象は文書だけではありません。ネット社会が進むにつれてコンテンツへのニーズは多様化し、今では文書以外にも画像・動画・音声といったコンテンツが溢れており、いずれもビジネスに大きなインパクトを与えています。
多様なコンテンツを扱っているエンタープライズ企業にとって、文書管理システムではいろいろと対応しきれない問題も発生しています。文書以外のコンテンツの統合管理、セキュリティの確保、コンプライアンス維持などなど、現代ビジネスを勝ち抜いていくためにはこれらの問題と真摯に向き合い、対応しなければいけません。
そうしたエンタープライズ企業が注目しているシステムが"ECM(Enterprise Contents Management:エンタープライズコンテンツマネジメント)"です。文書管理システムの進化型とも言えるECMは、コンテンツ管理の現場にどういった効果をもたらしてくれるのでしょうか?
ECMとは?
ECMは組織内に存在するすべてのコンテンツを一元的に管理するためのシステムであり、コンテンツごとにアクセス権限を設定してセキュリティを強化したり、コンテンツごとのライフサイクルを管理することで無駄な情報資産を持たなかったりと、さまざまな役割を持っているシステムです。概要としては文書管理システムと大きな違いはありませんが、明確な違いはやはり管理するコンテンツにあります。
文書管理システムでは紙で作成した書類をスキャナーで読み取って電子データファイルとして管理し、業務アプリケーション上で作成した電子データファイルやExcelドキュメント等も併せて一元的に管理します。文書ごとにアクセス権限を設定してセキュリティを強化できるのも、文書のライフサイクルを管理できるのもECMと同じです。
一方、ECMでは文書管理システムで管理するような文書を含め、画像や動画、音声といった構造化されないデータの保存も可能になっています。ビッグデータがIT業界の大きなトレンドになり、さまざまなコンテンツで溢れかえっている現代ビジネスでは、一元管理の範囲を文書だけでなくそれ以外のコンテンツまで広げる必要があります。
また、文書に限らずコンテンツには企業の機密情報や外部に漏えいしてはならないノウハウ、技術、個人情報等が含まれているため、コンプライアンス遵守の観点から見てもコンテンツの一元管理が喫緊の課題となっています。
ECMの重要性
ECMが誕生したのは2000年頃とされており、当時は欧米諸国を中心としてECMニーズが少しずつ広がっていきます。ただし、日本においては紙書類・印鑑といった文化が根強く残っていることから、ECMに対するニーズはほとんどなかったと言えるでしょう。それから数年が経過して、2006年頃からECMに対するニーズが少しずつ増加していきます。2006年といえばIT業界において、様々な出来事が重なった年です。
<2006年 IT業界の主な出来事>
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IEEEの会合で次世代無線LAN規格「802.11n」のドラフト版を採択(1月)
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JR東日本がモバイルSuicaを開始(1月)
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ボーダフォン新社長に孫正義氏が就任(4月)
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「ワンセグ」開始(4月)
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GMOインターネット証券がネット専業証券取引サービスを開始(5月)
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「Google Book Search」で著作権切れ書籍の無料PDFダウンロードを開始(8月)
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NTTが1本の光ファイバーで14Tbpsの光伝送に成功(9月)
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「Googleカレンダー」ベータ版開始(9月)
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米アップルのジョブズCEO、iTunesコンテンツをテレビ再生できる「iTV」披露(9月)
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GoogleがYouTubeを16億5000万ドルで買収(10月)
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任天堂Wii発売(12月)
こうして見ると、2006年はIT業界全般にとって大きな転機となる年だったと言えます。クラウドコンピューティングという用語が使用され始めたのも同年であり、Google App EngineやAmazon EC2といったサービスも開始しています。
2006年を起点として日本のインターネット上ではさまざまなコンテンツが扱われるようになり、それをビジネスに活かす企業も増えていきます。従来は文書だけ管理すればよかった環境が一転し、画像や動画、音声といったあらゆるコンテンツが価値を持ったために、それらを統合的に管理するニーズが急増したのです。
現在になりECMがさらに注目されている理由には、活発化するグローバル展開と重要性が増すコンプライアンス遵守の2つが挙げられます。
グローバルビジネスを成功させるためには、本社で蓄積した情報と、現地で得た情報を活用して経営の最適化を図っていく必要があります。その際に、グローバル規模で利用可能なECMにニーズが集まり、統合的なコンテンツ管理によって情報共有が促進します。さらに、コンテンツが増えるほどに管理対象は複雑になり、情報漏えい等のリスクも高まります。コンテンツごと、ユーザーごとにアクセス権限を設けてコンテンツをしっかりと保護することで、コンプライアンス遵守への対応が可能です。
ECMのメリット
最後に、ECMを導入することでのメリットについてご紹介します。
①検索性向上・情報共有促進による生産性大幅アップ
ECMには組織内のあらゆるコンテンツが管理されています。契約書も、稟議書も、見積書も、画像も、動画も音声も、すべてのコンテンツが一元的に管理されることで、ユーザーはシステム上でも目的のコンテンツを検索するだけで簡単に情報を取得できます。さらに、情報共有もECM上で行われるようになるため、組織的に生産性が大幅にアップします。
②ナレッジの蓄積・共有によるノウハウとスキルの向上
あらゆるコンテンツをECMで管理することは、企業にとって価値の高いナレッジを蓄積・共有することになります。社員教育目的にコンテンツを管理することも可能で、全体的なノウハウとスキル向上にも貢献します。
③コンテンツごとのセキュリティ管理によるコンプライアンス遵守
ECMではコンテンツの種類ごとにアクセス権限やワークフローを設定できます。コンテンツのセキュリティ管理を徹底することでコンプライアンス遵守に繋がり、信頼性の高いシステムを構築できます。
④BCP策定・運用による事業継続性の改善
近年ではECMをクラウドコンピューティング上に構築し、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の一環として運用するケースが増えています。自然災害等が発生して本社がダメージを受けても、ECMに管理されたコンテンツは無傷なので事業継続性が大幅に改善されるでしょう。
まとめ
いかがでしょうか?ECMはエンタープライズ企業にとって大きな価値をもたらしてくれるシステムです。この機会に、ECMによるコンテンツ一元管理をぜひご検討ください。